2022.09.05

これからのVUCA時代を生き抜くために必要な 『どこでも通用する力“CSA”』とは?

  • #コラム

テクノロジーの発展により、市場環境の変化は過去にない水準で激しくなっています。企業が強みとしてきたものが、テクノロジーの力であっという間に陳腐化する。旧来のビジネスモデルが機能しなくなる。こうした変化が日々生じることで、企業の寿命はどんどん短くなっているのが実情です。 

 

対照的なのが「仕事人生の長期化」。医療の進歩による長寿化や、少子高齢化に伴う働き手の不足。現役のビジネスパーソンとして働く「仕事人生の長さ」は、今後もさらに長期化していくことが予想されます。75 ~ 80  歳くらいまで働くことが一般的になることも十分にある時代。企業の寿命より、個人の仕事人生のほうが長くなります。 

 

高度経済成長期のような終身雇用は、過去のもの。「一つの企業で定年まで働く」ことを前提として考えるのは難しいといえます。転職や副業・複業、起業、フリーランス化など、どんな道を選ぶことになっても問題ない「どこでも通用する力」を身につけることが必要です。 

 

「どこでも通用する力」を身につける方法として、最もイメージしやすいのが「スキルの習得」でしょう。ではどんなスキルを身につければ良いのか。参考になるのがハーバード大学のロバート・カッツ教授が提唱した「カッツモデル」です。発表から 60 年以上と古いですが、ポイントを押さえた分かりやすいスキルモデルです。 

 

カッツモデルでは、ビジネスで成果を出すために必要なスキルを「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の 3 つに大別しています。 

 

  • ▼コンセプチュアルスキル 

自分の仕事や組織の現状を分析し、物事の本質を捉え、課題を解決する能力 

  • ▼ヒューマンスキル 

他者との良好な関係や刺激的な関係を構築・維持する能力 

  • ▼テクニカルスキル 

特定の職務を遂行するために必要な業務知識や技能 

 

この中で、最も注目されやすいのはテクニカルスキルです。代表的なものとしては「士業」などの資格やプログラミングの技能などが挙げられます。ただし変化の激しい社会において、こうしたスキルの寿命は短くなる一方。「一生使えるテクニカルスキル」はほぼ存在しなくなったといえます。 

 

もちろん常に新しいテクニカルスキルを学ぶことは欠かせません。次々と出てくる新しい技術やツール、新しいトレンドに対応し、知識やスキルを吸収し続ける。そうしなければ、あっという間に「時代遅れのビジネスパーソン」になってしまう。それだけシビアな時代です。 

 

これまで安泰とされていた「士業」などの資格保有者の業務でさえ、AI やロボットに代替されると言われています。現在、当たり前に存在している仕事が、近い将来「人がやる仕事」ではなくなっている可能性がある時代。テクニカルスキルの習得だけでは、将来への備えとして不十分といえます。 

 

テクニカルスキルの習得と同時に、ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキルも含めた「どこでも通用する力」を磨くことが欠かせません。その力を当財団では『CSA』と呼んでいます。 

 

CSAとは、『CareerSelectAbility(キャリアセレクタビリティ)®』の略称です。「Career(キャリア)」「Select(選ぶ)」「Ability(能力)」を掛け合わせた造語で、『キャリア自己選択力 ®』と訳しました。 

 

就職・転職のとき、または社内異動のときなどに、さまざまな選択肢の中から自分が望む道を選べるだけの実力。転じて、どんな職場で、どんな環境に置かれても通用するような力を『CSA』と呼んでいます。 

 

これまで使われてきた概念として「Employability(エンプロイアビリティ)」がありますが、これは「企業から雇用される力」であり、企業が主体の考え方です。対して、CSA は個人が主体。どんな職場環境でも活躍できるだけの実力をつけ、自ら望む道を選べるようにすることを目指すという点が異なります。 

 

では『キャリアセレクタビリティを高めるためにはどうすれば良いのか。』については、また別の記事で紹介したいと思います